産後の悩みとして、膀胱や直腸が下がってくるという症状があります。これは出産により、骨盤内臓器を支えている骨盤まわりの筋肉が徐々に緩んでき、支えを失った膀胱や子宮、直腸が腟から突出することで起こります。これらを総称して骨盤臓器脱といいます。下腹部や膣の中に、ものが降りてきたような違和感や、入浴時に膣から丸いものがふれるというのが初期症状です。進行すると、常に股の間にものがはさまった感じとなり、尿や便がすっきりと出なくなります。痛みはなく、命に関わるものではありませんが、放置していると排尿障害をおこして、腎臓に負担がかかったり、便が出にくくなるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。恥ずかしがらずに、きちんと症状を把握し対処しましょう。では、産後の膀胱や直腸が下がってくる症状とその原因や対処法について調べてみましょう。

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産後に直腸が下がるのはなぜ?

第二子を出産したのですが、退院診察で膀胱と直腸が下がり気味だから注意するようにと医師から言われました。直腸が下がってきたら、具体的にどのような症状がでるのか心配です。あまり動かず安静にしていたほうがよいのか、これからの日常生活で注意すべきことや改善方法などありますか?

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産後に膀胱や直腸が下がる原因は?

産後の女性の身体は、骨盤底の筋肉や結合組織が緩んで、膀胱、子宮、直腸などが膣壁と一緒に下がり、膣から出てくることがあります。このように、骨盤内の臓器が下がって膣から出てくるものを総称して、「骨盤臓器脱」といいます。

骨盤臓器脱の最大の要因は出産です。骨盤底の筋肉や結合組織がしっかりしていれば、膀胱、子宮、直腸などの骨盤内臓器は骨盤底に支えられて、体内のあるべき位置に納まっています。胎児が腟を通る際に、骨盤底の筋膜・じん帯に傷がつくことがあります。損傷した筋膜・じん帯は、歳を重ねるごとにゆるみが大きくなり、臓器を支えきれなくなります。つまり、骨盤底が緩んでくると、臓器の重みを支えきれずに、膀胱などが下がってしまいます。また、腹圧も影響するため、肥満や便秘による排便時のいきみ、ぜんそくなどによる慢性的なせき、重いものを持つ仕事なども、骨盤臓器脱を起こす要因となります。

骨盤臓器脱には、子宮を支えるじん帯が緩むことでおこる子宮脱。子宮筋腫などで、子宮を切除した場合に腟壁が出てくる腟断端脱。腟の前側にある筋膜が緩むことで起こる膀胱瘤。そして、腟の後ろ側にある筋膜が緩むことで起こる直腸瘤など、様々な種類があります。これらのうち最も多くみられるのが、膀胱が出てくる「膀胱瘤」です。膀胱瘤だけで起こることもあれば、子宮の出る「子宮脱」や、直腸の出る「直腸脱」などが併発することもあります。

産後の骨盤臓器脱の症状は?

骨盤臓器脱の初期には、入浴中などに股の間にピンポン球のようなものが触れるようになります。進行すると、歩いているときに股の辺りに何かが下がっている違和感があります。とくに、夕方から夜にかけて感じやすいようです。夕方以降に症状が出るのは、日中の様々な動作によって、腹圧がかかり、臓器を押し下げるためです。寝ている間は腹圧がかからないので、朝には症状が軽減しています。

《主な自覚症状》

・お風呂などで陰部に何かが触れる。
・椅子に座ると何かが押し込まれるような感覚がある。
・下腹部に違和感がある。
・排尿してもオシッコが出切らない。
・排便できない。
・午後になると不快感が強くなる。
・下着に血がついている。

痛みはなく、命に関わるものではありませんが、放置しているとトイレが近くなったり、尿がでにくい排尿障害をおこして、腎臓に負担がかかったり、便が出にくくなるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。いつも便秘がちで排便時にいきんでいる人、肥満、高齢出産、多産(3人以上出産)、大きな赤ちゃん(3500g以上)を出産したママなどが、子宮脱のリスクが高いと言われています。

膀胱瘤や尿道脱では、しばしば尿失禁や頻尿を認めます。膀胱瘤がさらに進行すると、逆に排尿困難になる場合もあります。直腸瘤では便秘や排便困難が出現しやすく、ひどくなると排便時に膣内に指を入れ、脱出している直腸を押してやらないと排便できない場合があります。

子宮脱では陰部に何か物があるような膣内異物感や、陰部が引っ張られているような症状を訴えます。「いすに座っていると、ボールの上に乗っているような感じがする人や、何かが落ちてきているみたいな下垂感を感じると訴える人もいる症状です。「体の心棒が取れてしまったような、なんとなく不快」という表現をする方もいます。子宮脱が進行すると、子宮が膣内から飛び出すようになり、自分の手で膣口に何かを触れたり、また粘膜がただれ炎症を起こしたりします。

産後の骨盤臓器脱の対処法は?

まず、予防法としては、肥満にならないように、妊娠中からウォーキングなどの適度な運動をし、体重のコントロールをしっかりしましょう。また、常日頃から便秘にならないように気を付け、重いものを持たないようにするなど、腹圧をかけない生活を心がけましょう。

それから、骨盤底筋群を鍛える運動が効果的です。骨盤底筋群を鍛えるには以下のような簡単な方法があります。

  • おしっこをするときに、おしっこを途中で2、3回止めてみる。
  • 立ちながら、おしっこを止める要領で、膣をキュッとしめる。

これができるようになったら、骨盤底筋群を鍛えるケーゲル体操(キーゲル体操)を取り入れてみましょう。
子宮脱は、骨盤底筋群が傷んだりゆるんだりすることが原因なので、筋肉を鍛えることが予防になります。

骨盤底筋群を鍛える体操を「ケーゲル体操(キーゲル体操)」といい、出産に備えて膣と会陰部の筋肉を引き締めるための運動です。産後の子宮回復も早まります。

《ケーゲル体操をするには》

・仰向けで膝を少し曲げた状態
・うつ伏せで肘をついてお尻を少しつきだした姿勢
・椅子などに肘をついて、腰を少し曲げた状態

《ケーゲル体操の方法》

1,仰向けに寝て膝を立て、脚を30センチほど開き、足の裏をピッタリと床につける。
2,排便をする時のように力を込め、膣と肛門周りの筋肉を引き締める(8~10秒)。
3,力を抜いてリラックスする。

※10~20回を1セットとして、一日に3セット行います。

子宮脱の場合は、子宮が回復するにつれ徐々に治るものですが、骨盤底筋を鍛える体操をすれば回復が早まります。出産直後には骨盤底筋はとてもゆるんでいる状態になっています。筋肉というのは一度弱くなってしまうと放っておくと弱くなる一方です。強くするためにはトレーニングをして鍛えなければいけないのです。けれど、骨盤底筋は普段の生活で鍛えられるような筋肉ではないので、意識を持って鍛える必要があるのです。肛門と腟を体の中に引っ張り込むような感じで締める体操など、産後体操で指導されていると思いますので、実行してみましょう。

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まとめ

骨盤臓器脱には薬は無効で、治療の原則は手術療法となります。また、脱出が軽度の方や手術を受けられない方のためには、対症療法としてリングペッサリーを挿入する方法もあります。

デリケートな部分なので、周囲の人に相談がしずらい症状ですが、骨盤が安定しない状態で赤ちゃんの抱っこなどをしていると、症状が悪化する可能性もあります。赤ちゃんのお世話で疲れているのですから、一人で抱え込まずに1か月検診の時などにでも病院に相談しましょう。

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